烏鷺記

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704 名前: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 04/02/10 22:03

唐は安史の乱があったころの話。
長安に迫る戦火から逃れるため、時の皇帝玄宗はじめ宮中関係者は蜀の地に逃れた。
蜀へ逃れる一行の中に、ある碁の得意な文官がいた。彼は、やはり一人道に迷い、さ迷い歩いていると、
山中で人の住む家を見つけることが出来た。彼は戸を叩き人を呼ぶと、小屋の中から老婆と若い娘が顔を出した。
彼は道に迷った旨を告げ、今夜の宿を請うと、母娘と思しき二人は家の中に招きいれてくれた。
食事をもらい、いざ就寝となり寝具に身を横たえると、隣の部屋で寝ているはずの母娘の話し声がもれ聞こえた。
こそこそと話す声に無意識に耳を傾けていると、母娘は碁を打っているようだった。
碁盤も使わず口頭で、お互い横になったまま次々に手を打ってゆく。彼も興味が出、熱心に聞き耳を立てた。
母娘は二人とも、ものすごい長考で、碁の得意な彼も知らない打ち手を様々に使っていた。
そして、夜半までかかったにも拘らず手は五十手も進まず、ついに勝負は付かなかった。
翌朝、彼は小屋を辞し一路蜀へ向け道を進んだ。彼は後、この山小屋で聞き耳を立てた母娘の勝負から、
妙手を得た、と話したという。



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