奇妙な杉

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731 名前: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 04/02/11 19:49

五、六年前くらいのことだろうか。
その日も俺は、いつもよくいく近場の山へ登りに行った。
ふと、今日は違うルートで遊びたいなと思い、道もついてない雑木林へと
足を踏み入れた。
ところが杉林が延々と続くだけで、一向に眺望は開けてこないし、歩きは
辛いし、正直、馬鹿なことを考えたものだと後悔して、もうやめようと思
った。
しかし道を引き返すのも面倒で、川に沿って下れば適当な場所に降りられ
るだろうと、たかを括って降り始めたのだが、笹の藪につきあたり道のり
は険しさを増すばかりだった。それでもかなりの距離を歩いていたので、
ほどなく里に行き当たる筈だと、強引に進み続けた。
そうしてしばらく歩きつづけると、笹も杉林もまばらな少し開けた場所に出た。
そしてその少し開けた場所の中央に奇妙な杉が生えているのを発見した。
十本ばかりの杉が円筒状に生えていて、その杉どうしの隙間が20センチ
くらいしか離れていず、隣合った枝どうしが癒着しているものを想像して
ほしい。
俺が見つけた奇妙な杉というのが、そんな姿だった。


732 名前: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 04/02/11 19:50

下生えの枝は、癒着したもの以外は、ちゃんと刈り込まれていて、あきら
かに人偽的なものと見て取れた。
そういえば、前にテレビでこんな風に木を曲げたり枝を癒着させたりして
いる、外国の園芸家だかアーティストがいたのを思いだし、多分これも、
それに類したものだろうと思った。
「カメラを持ってくれば良かった」と思ったが生憎、その日に限って持っ
て来なかったことが今でも悔やまれる。
円筒形の内側を覗いて見ようと思い、枝の隙間から覗いて見たが、なにぶ
ん暗い森林の中、午後も暮れかけようという時間なので暗くて闇を覗きこ
んだだけだった。
枝の密集を足がかりに5メートルくらい登ってもみたのだが埒が開きそう
もない。
もっと詳しく観察したかったのだが、日も暮れる時間も間近ということで
観察もそこそこに山を降りた。

結局、断崖につきあたり、来た道を引き返し本来の登山道に戻る頃には陽
も暮れて、闇の中、懐中電灯の明かりだけを頼りに山道を降りることにな
った。

もういちど、あの場所に行きたいと思っているのだが、なにぶん険しい道
のりなので、未だに見にいってない。
(糸冬)



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