出合った動物

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60 名前: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 04/05/15 12:27 ID:YSSTlOPh

小学生の頃の話し

早朝に山へ出かけて、ネマガリタケというタケノコを採っていると、
まだ背の低かった俺は、方角を見失ってしまった。
この竹(本当はチシマザサって言うらしいけど)は、背が低いけど、
ものすごい勢いで群生して生えているので、前に進むのも容易じゃないし、
生えている場所が急勾配で、とても歩きにくい。
竹林の中で途方に暮れていると、竹林の奥から「ハァッハァッ」という、
危ないオッサンか野犬の息づかいのような音が聞こえてきた。
薄暗い竹林の中で、俺がビビりまくっていると、目の前に茶色い体をした
オオカミみたいな動物が姿を現した。
見ると、顔はひしゃげた子供のような顔で、鼻と耳がなかった。
俺が死ぬほど怖がっていると、その動物は、びっくりしたように俺を見つめた後、
「まったく、ついて来い」
と、ものすごく乾いた、子供のような声で言った。
普通なら絶対について行くわけがないんだけど、恐怖よりも
「ついて行かなくちゃ」
という気持ちの方が強くて、その動物について行った。
途中、竹林の中に小さな小川があって、それを飛び越えると、
本当にその途端に、俺は竹林の外に出ていた。
背後でガサガサと音が聞こえたので見ると、その動物の尻尾が
竹林の中にとけ込むように消えていくところだった。
とりあえず「ありがとうございました」と頭を下げた。
ちなみに、親父はタケノコをリュックいっぱいに採ってきて、
俺の話しを聞くと「感謝しておけ」と頭をクシャクシャやられた。
そして、採ったタケノコの3分の1とおにぎり1つを竹林の前に置いて帰路についた。
微妙にセコいお礼だった。



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